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dcst 夢小説 短編まとめ

第2章 【羽京】東の姫君とお見合い


本気で何を着て行けばいいか分からなかったので、自衛隊の先輩や学生時代の友人に相談した。何とか帽子にパーカー、ロールアップしたズボンにスニーカー、斜めがけのリュックサック……という服装を作り上げた。
勿論自腹である。まあ普段着のオシャレを考えて来なかった自分のせいなので仕方ない。

「お待たせしましたか?」桜子が問いかける。「いえ、まだ10分前ですし」そうフォローする。

「…申し訳ありません、場所の指定を間違えたようですね。」「え…」「先程から、とてもお辛そうなので」
桜子が眉を少し下げる。確かに周りが桜子の美貌に当てられてヒソヒソ言ってはいるが、普通の人ならこんなの気にしないだろう。

「少し、移動しましょうか」そう言ってニッコリ笑い踵を返す桜子に、取り敢えず羽京はその場を後にした。

******

「ここは流石に静かですね」
「はい」

横浜山手。そこにある西洋館の一つに、二人は来ていた。ここは向こうから来ていた『行ってみたい所リスト』の一つでもある。他には中華街やら横浜の夜景が見たい、等があった。
昼間で人が少ない場所というのも考慮してここになった。

この場所では観光客の声もしたりはするが、平日なだけあり人も少なく、そこまで煩く無い。

他にも人は居るがーー
羽京はベンチに座りながら、周囲をチラリと見やった。ここは横浜の景色を一望出来る高さにあるからか、イーゼルを置いて黙々と絵を描く作業をしている人がポツポツと居た。その為、一定の静けさが約束された様な場所でもあったのだ。

「お身体の具合は、どうですか」「え」「駅にいらした時は、顔色があまりよろしく無かったので」少しは良く見えますが…と言う桜子に、気を遣わせた事を申し訳なく思った。
「いえ、ありがとうございます。わざわざ静かな場所を選んで来てくれたんですよね」「…事前に調べた限りでは、ここがいちばん静かだと言うことでしたので。あまりお気になさらず」

そう言うと桜子は、スッと横浜の景色へと視線を戻した。風が彼女の髪を微かに揺らす。
…どんな人が飛び出て来るのか。びっくり箱の様に思っていたが、案外いい人そうである。

自分も気を遣ってもらったからには、何か話題をと思ったが、上手く出てこない。女性とこんなやり取りをして来なかったツケがまわってきたか。
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