第3章 甘え上手の実
研究室に戻るとゲンガーが
気難しい顔をして実を手に持っていた。
「あれ……それ、
レンティルに自棲してる果物だよね」
「あ、はい
これコピア諸島から採ってきて、
すごく甘くって美味しくて……
ゲンガー?ちょうだい、……あれ」
ガンとして渡すまいと渾身の力で
果物を握りしめるゲンガー。
事態をなんとなく飲み込めてきた。
「食べたのかい…………それ」
「ゲガガッ!」「はい……?」
額を抑える。どうしては
こう……危機感がないのか。
この実はモジャンボが好むもので
ほとんどの生き物は耐性がなく
催淫効果があらわれてしまう。
モジャンボはこの成分を体に溜め、
獲物を絡めとる時にツルから出して
逃げづらくする習性があるのだ。
というのもモジャンボほど体が大きいと
タンパク源が足らず肉食が必要になる。
「でもこんなになるまで効くものじゃ
ない筈なんだけどな……」