第3章 甘え上手の実
研究所にあるのはよくある
安物のインスタントコーヒーだ。
支度に時間はかからない。
セットし、振り向こうとした瞬間、
「おっと!?、くん」
「あ……す、すみません……」
ぶつかり転びそうになり
とっさに壁に手をついたは良い。
だがこの体勢は良くない……!
いわゆる壁ドンの状態だが
はホヤっと僕を見上げている。
……逃げない、のか。
「……チョコレートを」
「え?」
「チョコレートを……とりに」
妙な沈黙が流れる。
そうだ、早く退かなければ。
いつまでもこうしてる理由がない。
「博士……?」
「あ、ああ……いや、
……その……」
しどろもどろになり、
言葉を上手く紡げず顔を寄せる。
あと、すこしで……