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僕と彼女の声帯心理戦争

第5章 【第1章】嵐の前の静けさ Day3


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その後、石片を杠が石片パズルをしている場所に届ける。
杠には監視役としてニッキーが付いている。……千空達科学王国に少し肩入れ仕掛けている自分はまだしも、監視役のニッキーの目をかいくぐって石片を集める時点で、まずミッションの難易度が上がる。

そこで、杠と相談して葵は石像の破片を集めて来る方メイン、ある程度集まっていれば、石像を組み合わせる作業に従事する事となった。

「……羽京君、監視役だからこっから先は不味いよね?私それくらいなら持つから大丈夫だよ~」

「それは、そうだね。はい」
「ありがと~」
それは、こっちの台詞だ。きっと彼女が居なければ踏み出せなかった大きな1歩を、踏み出せたのだから。

「杠ちゃん~、これ集めて来たよー」
「わお!こんなに沢山…!?ありがとう、葵ちゃん!!」
「いえいえ~。これ、夫婦の石像だから、色分けしといたよ。……手を繋いでるみたいだから、二体一緒に作業した方がいいかも」
「えっ」

杠の叫びを他所に、彼女は青いリボンとピンクのリボンで結ばれた袋を置く。もうひとつの何も付いていない袋からカシャカシャ、と石片を出して軽く並べる。

そこには、しわくちゃの二人の人間の手が、組み合わさっていた。

「これ……」
「……石化する時ですら手を繋ぐ様な大事な人がこの世に居るんなら。ちゃんと復活させたくて」
ふふ、と切なげに笑う葵。
「……そうだね」

二人が感慨深げに石化時から握り締められた、老夫婦の手を見つめていた。

羽京も、木陰からそっと二人の様子を見守る。
ーー未亡人、と彼女はハッキリそう言った。
大事な人が居ないから、石像破壊を止めたり、危険な事が出来るのだろうか。

何処か『自暴自棄』に感じられる位に自分の命を軽視した行動を取る彼女。

どうにか。どうにかーーーー
何か、大事なものを見つけて欲しい。
君だけの『神様』を。自分以外で、信じられるものを。

監視対象と言う事と関係なく、羽京はそう思った。
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