第15章 【第3章】サヨナラの可能性
「うん……綺麗なの好きだよ……羽京君はね、出逢った時から……私の事、助けてくれた時からずっと、綺麗だから……
だから、羽京君さえ居ればいいよ」
指輪は要らない、と笑う彼女に、僕は驚いた。
ーー綺麗な物。その中に、僕も入っていたのか。
自分で自分の事は綺麗だと思えないけどーー、少なくとも、彼女の中ではひときわ『綺麗』で、大事なモノらしい。
「……神様って、本当に居たんだね……。
お嫁さん……私で良ければ、なるよ」
そう言って頬の十字架にぽろぽろと涙を流す葵の姿はーー
綺麗だった。
「……うん。大事にするからね。」
彼女の左手を取る。細く長いその薬指に、見えない指輪を通した。
「ふふ」彼女が笑う。
ーー世界は朝日に包まれて、海は煌めく。
彼女からは、嗅ぎなれた潮の匂いがした。