第14章 【第3章】ファム・ファタール
「……お返事、するから」「……え」これには驚く。はぐらかす事をしなかったのだ、あの彼女が。
ーー気まぐれで、いつも自分の手からすり抜けてばかりの彼女が。向き合ってくれた。
「……何処か静かな……音を出しても聞こえない位の…誰も居ない場所がいいです」
……なるほど。つまり、『彼女なり』の返事が出来る場所、って事か。
「いいよ。……でも、これだけは羽織ってね」そう言うと、彼女がいつも羽織っているフカフカのポンチョを被せた。
「…はーい…」彼女が素直にもそもそ、と上着を羽織る。
準備が出来たのを見て、じゃあ行こうか、と強引に彼女の手を握った。
「……!?!あの……!」と抗議の声を挙げる彼女を振り返り、しーっと指を口元にあてた。