第14章 【第3章】ファム・ファタール
「「「「…………えっ」」」」
「今日ライブで歌うのは~、死神のファム・ファタールシリーズ三部曲!オール通しでやります~」
二度『Aonn』ーー葵が繰り返すが、その場の動揺は収まらない。一日一曲のはずが、特別に3曲連続で歌うのだから。
「勿論司君の許可は取ってますよ~」
葵の声に、うん、と司も頷く。
本気でやるのだ、という事実に観客達がいつもより盛り上がる。
初の衣装替えもアリのライブ。羽京はプロデューサー…という事で一応一通り流れを叩き込まれたが……
何故か二番目以降の衣装デザインを、杠達がこぞって教えなかったのだ。
『別に凄く際どいのとかではない』とは言っていたが……
ライブ用に焚き火を起こして程よく照明が当たるよう準備や、観客に簡単なライブ用のペンライトを配布する。
凄い!!なんか現代みてえ!と喜ぶ観客達。
「鉱石を加工したペンライトなら確かにキラキラ光るし、これを先端に付けるだけでもそれっぽくなるね」
「本当だー!!!凄いぞこれは~!?!?」
「大樹……君も裏方の持ち場に帰ろっか」そう諭すと、ああ!すまん!とペンライトを観客に渡して帰って行く。
ちなみに今回は衣装チェンジもあるが、ダンスシーンもある。ファンの人でダンスをしていた数人に声をかけて、リボン作りの後のお昼の時間帯に練習していた。
『Aonn』自体は顔出し無しのミュージシャンだがーー
どうやら、10周年記念ライブに向けてダンスも練習したようで、普段と違うキレのある動きには周りの司帝国の面々も驚いていた。
(さて、どうなる事やら……)
今回だけは簡単なステージーー木で作った簡単な柱に、幕の様に黒い布をかけた目隠し程度の物だがーー
がある。その後ろでゴソゴソと杠が最初の衣装に着付けをする。
「ふぅ…衣装1着目、完了です!」ステージ内で二人に背を向けて立っていた僕が、遥か上方の演出係担当の大樹達にも弓を射る。
合図係である。
こういう用途の為に弓をやってた訳じゃ無いんだけどな~
あはは……と思いつつ、後ろの二人を振り返った。
ーー可愛い……
少量の髪の毛を編み込み、その先に薄紅のリボンを結んでいる。それが顔の両サイドに1つずつ。
白いロング丈の余裕のあるワンピースの様な服に、瞳の色と同じ蒼いカーディガンの様な物を羽織っている。