第12章 悪いゲンガー(中)
レナは縮こまっていた。
辺りにたくさんの紙が散らばり、
誰かがそれを踏みにじりながら
近寄っては罵倒していく。
これは悪くないシュチュエーション
なんじゃないだろうか。
「レナ、こっちだ」「……?」
「そんなとこに居ても楽しくないよな」
レナが顔をあげると、
俺がどこにいるか分からないのか
不安そうに立ち上がろうとする。
だが、目が見えないせいか転んで
這いつくばると静かに泣き出した。
「こっちだ……こっちだ……」
「……だれ…………
なんで……私を呼ぶの」
なんで、と何度も呟き紙を握りしめた。
指先が憎しみの強さに白くなる。
なんで、どうして、なんで、
と呪詛を吐きながらレナがもがく。
ヨタヨタと起き上がると
どんどん外見年齢が上がり、
普段のレナのようになった。
ぼんやりと立つ姿は、
恐ろしく孤独で不快だった。
何も映さない虚ろな目がさ迷う。
「こっちだ…………」