第12章 悪いゲンガー(中)
「……でも殺したくならないからって
ニンゲンが悪くない訳じゃない。
アタシはニンゲンに裏切られて死んだ。
殺されないけど助けてももらえなかった」
「ニンゲンも悪いって事か?」
「アンタも裏切られて捨てられるって事」
その言葉は一番冷たく胸に刺さった。
裏切られて、捨てられる……?
俺がレナに?そんなの、なんで。
「そうだ、アンタさあ
ちょっと殺そうとしてみなよ」
「……は、な、なに言って」
ゲンガーはヒヒヒと笑って俺に詰め寄る。
それは明らかに不安を煽って
獲物を食らう時のゲンガーの顔だ。
……俺はゲンガーだから、
食べられたりはしない……よな?
「アタシ、ゲンガーに殺されたんだ。
ゲンガーが殺しにくると
一番大切なヤツの声に聞こえるんだよ。
助けに来てくれたって
ついてったら今こうなってるんだ。
あのニンゲンにその時に
誰の声がしたか聞けばいい。
アンタがその大事な声だとしたら
裏切られたりしないんじゃない?」