第11章 里帰りの手土産(上)
この険しい道のりをゲンガーを追って
ターザンよろしく駆け抜けたあの日は
今思えば本当に向こう見ずだった。
「ゲンガーの故郷は本当に綺麗だね」
「ゲゲン……」
同じように快晴の空を見上げ、
眩しそうにするゲンガーに微笑む。
やはり青空とゲンガーはミスマッチだ。
眼下には何匹かポケモンも見える。
「ゲンガ!」「えっ?わ!!」
ガシ、と捕まれたと思うと
ゲンガーがそのまま飛び降りた。
嫌な浮遊感、消えるゲンガー。
ひ、と悲鳴にもならない呼気が
わずかに喉を掠める。
地上にホールが見え、キャッチされた。
生きた心地がしない紐なしバンジーに
背筋が冷たくなる。
「げ、ゲンガー!もうしないで!」
「ゲゲッ?」
なぜ怒られたのか、
という顔をしているゲンガーには
抗議も伝わってないようだ。