第2章 #01 憧れた雄英
そのとき、何かがわたしの片目を捉えた。
" 潰した " と思っていたが、1人のヒーローの個性が発動したらしい。
手を鎌に変えた女性の鎌の破片が、わたしの片目目掛けて飛んできたのだ。
『う、ああああ!!!!』
片目を潰された。
怒りで我を忘れたように、さらに強い重力をかけていく。
もう、ヒーローの声は聞こえなかった。
それでもわたしの暴走は止まらなかった。
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赤く染まった夕暮れ。
春の涼しい風。
荒らされたリビング。
筒抜けの天井。
血生臭い部屋。
倒れる両親。
片翼を無くしたわたし。
見えない視界。
わたしの意識はもう朦朧としていた。
片目を潰され、左翼を切断され、血も尋常じゃないほど流れている。
個性の暴走、それさえも今のわたしには手一杯だった。
なんで、わたしがこんなことをーーー
なんで、わたしの両親はヒーローにーーー
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