第2章 #01 憧れた雄英
両親を殺し、皆はもう満足なのだろう。
わたしも満足に逃げられる体ではない。
背中に激痛が走る。
だが、ここでわたしが諦めてしまっては、両親が殺されたままだ。
ここは家の中、そんなこと関係なかった。
目の前にいるヒーローにわたしの【個性】を叩きつける。
うつ伏せで倒れていたって、見える。
分かる。
家のことなんて知らず、勢いで天井が抜けたことすら知らず、彼らに力をかけていく。
ヒーローは、地面に這いつくばっている。
「な、なんなのよ!??」
「おいアイツ、どうにかしろよ!」
「う、動けねえよ…!!!!」
メリメリと地面にめり込んでいくヒーローたち。
その人間の形をしたまま、地面に食い込んでいくのが分かる。
『…滑稽だ』
醜い。コイツらも、わたしも。
一体なにに憧れていたんだ。
こんな汚いものに、わたしは今まで憧れていたんだ。
自分自身も、ものすごく醜く感じた。
外が騒がしい。
家はもう半壊状態。
誰かに通報されたんだろう。
そんなものは関係ない。
悪は、排除しなきゃいけないんでしょう?
メリメリと食い込んでいく「それ」は、既に見えない状態だった。
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