第2章 #01 憧れた雄英
両親が仕事の間、夜の散歩に出ることが増えた。
といっても歩くはずもなく、暗闇の中を白い翼を広げて空を飛ぶ。
ネオンが光る街を見上げながら、空に佇むのが好きだった。
わたしはいつも近くの高いビルの屋上に腰を掛けながら、コンビニで買ったジュースを飲みつつ世界を見下ろすのが日課だった。
こんなちっぽけな人間たちが、この街を作っているんだなあと考えてしまうのだ。
所々で黒煙も上がっている。
きっとあのあたりで敵が暴れ、ヒーローが救助に向かっているんだろうな。
こうやってひとりで考えることも増えた。
わたしは、どんなヒーローになりたかったんだっけ。
かっちゃんと出久の夢を応援しているはずなのに、わたしだけ明確な夢を持っていなかった。
両親みたいなヒーローになりたい。
その気持ちはもちろんあるが、それだけだ。
静かな暗闇の中、いつもいつも考える。
ジュースを飲み干したわたしは翼を広げ、家路に着くことにした。
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