第2章 #01 憧れた雄英
出久は気を失っているようで、頬をぺちぺちと叩いても起きる気配がなかった。
オールマイトも心配そうに、出久が目を覚ますまで待っててくれている。
わたしは地面に座り込み、オールマイトはその場で立っている。
「うーーーん、勢い強すぎちゃったかな」
『でも、出久きっと喜びます。出久、オールマイトの大ファンなので。…良かったら、これにサインしてあげてください』
「ふむふむ、ヒーローノートか!オタクめ!」
差し出したヒーローノートに、サラサラとサインを描いてくれた。
目を覚ましてこのサインを見たら、きっと出久は「家宝にします!」とか言って喜ぶんだろうな。
と、オールマイトは地面に座っているわたしと目線を合わせるように、膝をついた。
「君、ウイングヒーローの少女だろう?」
『え?』
「その翼で分かる。そして、母もあのヒーローだろう?だからあそこで個性を使うのを躊躇った」
『…はい、そうです。あそこで使うと、トンネル壊しちゃってどうしようもなくなると思ったので……』
「いい判断だ。えらいぞ」
わしゃっとわたしの頭を優しく撫でてくれた。
大きくてごつごつとした手。
暖かな手が、わたしの頭に添えられている。
「君のことは話に聞いている。とても " 素晴らしい " 個性を持っていると。」
『え、両親とお知り合いなんですか…?そんな話、聞いたことないですけど…』
「もしかしたら内緒にしていたのかもね。トップシークレット!!!!!」
アッハッハと高らかな笑い声をあげるオールマイト。
両親が、知り合いーー?
そんな話聞いたこともないし、なんで内緒にしていたんだろう。
ちょうどその高らかな笑い声で、出久が目を覚ました。
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