第2章 #01 憧れた雄英
「ンッ!!!ぐ、う、」
流動的な体を出久の体に這わせながら、口元を塞いでいる。
このままだと出久がーーー
『はなせ、っての!!!!出久!!!!!!』
「ぐ、あ、…ッ」
苦しそうな声が漏れている。
大きな瞳からは涙がこぼれそうだ。
必死に掴んで離そうとする、が、離れない。
掴めない。流動的だから、敵の体を掴めない。
「大丈夫さ…苦しいのは約45秒…すぐに楽になる…!」
ここはトンネルの中。
わたしの【個性】は、狭い場所では使えない。
しかも高さのない場所。
翼を広げて飛ぶこともできない。
わたしじゃ出久を助けられない。
『だ、だれかーーーッ!!!!』
苦しそうな出久。
助けられないもどかしさで、どんどん涙が溜まっていく。
ずっと掴み続けようとする両手。
掴めない敵。
もうーーーーー
「もう大丈夫だ!!!!!少年少女!!!!!」
背後から、ヒーローの声が聞こえた。
『お、オールマイト……!』
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