第4章 邂逅への誘い
「俺もえむえむおーだぶりゅ×▲〇♯*@★※」
「ちょ、ちょっとストップ! ストップ!!」
全然雅じゃない音量で歌仙が遮った。いや、ありがとう。
「急に文字化けしないでくれるかい!?」
「文字化け? いや、俺はただえむえむおーだぶりゅ※★〇♯×℃◇§@」
「ストオォォーーップ!」
必死の形相で歌仙が鶯丸の宇宙言語にかぶせる。いや、本当にありがとう。
歌仙がツッコミ全てを担ってくれたおかげで、まったく同じツッコミをせずに済んだ。しかも危うく狂いそうになるところだった。
鶯丸はあまり表情を変えなかったが、きょとんとしていた。いや、怖い。怖いって。
「……い、一体、なんの言語を――なんの話をしているんだい!?」
「歌仙も知っているんじゃないか。俺もげーむがやりたいんだ」
「「??」」
クエスチョンマークをお互い頭上に掲げながら、歌仙と顔を見合わせる。
続きをよくよく聞けば、MMORPGがやりたい、という話だった。なぜ、ОからRでなく急にWになるのかは、永遠に解明されないだろうしそれでいい。
「演練で他の刀剣が話していて興味がわいた。できればすまほがいい」
「スマホですか? ゲーム機でなく?」
鶯丸は頷いた。そこまで本格的にやりたいわけではないという。
困った。鶯丸だけにスマホを持たせる、というわけにもいくまい。
もしほかの男士から求めがあれば、当然応じないと不公平になる。
全員にスマホを持たせるとなると、かなり費用がかかる。
新米も新米の自分の給料では、とてもじゃないが難しい。
「そうか。無理を言ってすまない」
思いのほかあっさりと、鶯丸は引き下がった。軽く一礼して、静かに部屋を出ていく。
いやに諦めがよく、ほんの少しの違和感を感じた。
ゲームは口実で、目的は別にあるのでは――。