第11章 決戦前夜
審神者と鶯丸が一通り話終えると、部屋の温度と湿度はさらに爆上がりした。
彼らは、自分が鶯丸と同じ目に遭ったら……と、そっちの方向で咆哮していた。
「主と離ればなれなんて……!」
「かわいそう……」
「つらすぎる……」
「ちょっと!? 主いる!?!?」
「いるだろ! ていうかきみが抱きしめてるだろう加州!」
「う、うわあああぁぁあぁんんん!!!」
「お、おい泣くなって! 鶯丸の気持ちも考えろよ!」
「だってぇ、だってぇええ……っ!」
「僕は鶯丸の分まで泣いているんだ、ですか」
「それはないだろう宗三」
「人のことはいいから長谷部、いい加減主の羽織を脱げ。俺が着る」
「えっ!? なんでナチュラルに着続けてんですか!? なんで山姥切さんもさらに重ねるつもりなんですか!?!? キモッ!!」
「兄弟、確かに気持ち悪いが言いすぎだ」
各々が好き勝手し始めていた。あらゆる緊張が解け、タガが外れたのかもしれない。
騒がしさを増していくばかりの中、片膝を立てて座る鶯丸の足に小さな人影が飛びつく。
「俺ら、なんでも協力すっからな!」
快活で、確かな熱を感じさせる声は愛染のものだった。涙で潤んだ瞳は、けれどやんちゃな動作で鶯丸を覗き込むように迫ってくる。瞳には真摯な光が煌々と燃えていた。
厚、小夜、五虎退などといった短刀の面々も、同じように
「もっと早く頼ってくれよ!」
「何から斬ろうか?」
「虎さん、なでますか……?」
などと口にしながら鶯丸を囲み始める。
本当に愉快で、優しい刀たちだなと思った。