第9章 ifの話(PandoraHearts/エリオット)
「話は…わかっているわね、アリア。」
そう言って、背後の時計ウサギを見上げる。
アリア、とは100年前からの時計ウサギの愛称だ。
の視線に、時計ウサギは控え目がちに頷いたように見えた。
それを頼もしげに見届けると、は時計ウサギの純白のマントから光と共に零れた、カルケルに似た小さな鏡を受けとり、エリオットに差し出す。
「エリオット、悪いのだけど、少しだけこれに血を垂らしてもらえるかしら。」
「あ、ああ。わかった。」
おそらくそれが、エリオットと時計ウサギを繋ぐ鍵となるのだろう。
エリオットは鏡を受けとると、親指を少し噛み、滲み出てきた血をそれに吸わせた。
「…こんなもんでいいか?」
「ええ。」
そのまま持っていて、とジェスチャーをし、が鏡を持つエリオットの手に自分の手を重ねた瞬間。
そこから眩しい光が放たれ、一瞬だけ、部屋の中が純白に満ちた。
「っ…………!」
見ていたオズたちが、その荘厳さに息を飲む。
暫くの沈黙のあと、何かに祈るように術の間ぎゅっと目を閉じていたが目を開け、エリオットと視線を絡ませた。
「……終わったわ。」
そう言って安心したような笑みを浮かべるには術の大変さを物語るように冷や汗が滲み、少しだけ荒く息をしていた。
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