第8章 愛ゆえの(マギ/ジャーファル)
コト……
執務室にて、ここらでは珍しい長い黒髪を揺らめかせた少女が、机にペンを置く。
長時間の書類整理に疲れたのだろう、背もたれに体を預け、窓の方を見遣った。
「……?」
すると、ぼーっと外を見ていた少女―に、声がかかる。
先程から机の前のソファに寝転がっていた人物で、ある意味この部屋の主人。
彼は顔にかかった紫の髪を払いながら、何故彼女がここにいるのかわからないようで目を丸くしている。
「おはようございます、シン様。」
「おう、おはよう……………って、え?」
「?」
「なんでがここにいるんだ?」
彼の疑問符の意味が分からず首を傾げていたも、最後の問いでわかったらしく。
ああ、と納得したように声をあげ、ふと笑みを浮かべる。
「ちょっとここ覗いたらシン様が寝ていたから。書類をと思って。」
一切の悪気もなさそうに、にっこり笑うの言葉に、サーッとシンドバッドの顔が青ざめる。
彼のあまりの動揺に「シン様?」とが声をかけるが、シンドバッドの耳には入らないようで。
シンドバッドは跳び跳ねるようにソファから立ち上がると、に近づいて彼女を立ち上がらせた。
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