第9章 婚約者は誰?
あたしの頭の中で、悟くんといれる未来を考えてみなかったわけではない。
でもそれは、あたしが正規の婚約者というわけではなく、悟くんが力づくで周りを黙らせて、曾祖父様の遺言を破ってあたしを側に置くっていうやり方。
遺言を大切に思っている五条家の人間はたくさんいるからきっと血で血を洗うような争いになる。何代も続いてきた遺言書による婚約に従わないなんて前代未聞。殺伐とした中でのあたしとの婚約。誰も認めても祝福してもくれない。
悟くんが遺言に従わないなら、分家が本家を継ぐ可能性だってある。悟くんの次期当主の座は剥奪。当主と奥様に申し訳なくて一生頭が上がらない。
もし本家に残ったとしても、あたしは五条家を巣食う魔物みたいな目で見られ、恨まれ、次期当主を誘惑したあばずれ女だと後世までその悪名を残すことになるだろう。
それでも好きだからって悟くんの横に立ち、無下限呪術を相伝する可能性の低い子供を産んで、五条家が衰退していく未来を背負いながら生きていく。
悲惨だ。
そんな五条家の未来に耐えれなくて結局あたしは座を退き愛人になるのかもしれない。「でも愛人は無理! 殺しちゃうかも!」ここで考えは堂々巡りしてあたしは寮の机で眠っていた。
だけど、もし遺言の内容が
「次期当主が18歳の時点で交際している女性を婚約者とする」
だったら、あたしは正式な婚約者ってことになる。夢のようだけど、一度そうかもしれないって思うと、ますますそんな気がしてあたしは気持ちが浮足立った。
遺言の内容がそうなんじゃないかと思ってしまう出来事はこの後も続く。五条家の方々の行動はあたしの妄想を加速させるような事ばかりだった。