第9章 婚約者は誰?
――だけど、もし、あたしが婚約者だとしたら、遺言が開示されてから起きたこれまでの事はすべて辻褄が合う。
任務が軽くなったのも、奥様があたしを五条家と縁の深いところに連れて行くのも、あたしと悟くんの交際を公認みたいに何も口出ししてこないのも、こんなに高価な着物を見立ててくれるのも納得がいく。
誰か暴走してるあたしの妄想を止めて! スピードメーター180キロまでぶっちぎっちゃってる。アクセル離して! ブレーキ踏んで!
「ねぇ、この際、悟もお揃いでお着物作ったら?」
は?
ブレーキが取れて転げ落ちた。修理不能。奥様は何をおっしゃってるの? この際ってなに? お揃いってなに? やっぱりあたしが婚約者なんじゃ?
新鮮な脳を届けてほしい。きっと脳が錆びてるんだ。何をどうすれば遺言書にあたしが出てくるんだ。
そうだ、わかった! 遺言には別の婚約者が書かれてるけど、悟くんが言うこと聞かないとか? それで本家は押し切られてるとか?
……ううん、それならこんな穏やかな親子関係になっていない。遺言に背くんだからもっと確執を生んでるはず。あたしだって関係がバレた時点で即五条家から追放されてる。
錆びた脳をフル回転させてぎゅうぎゅうに搾り上げて考える。結果、ひとつの案が思い浮かんだ。これだ……。遺言書にはきっとこう書かれていたんだ。
「次期当主が18歳の時点で交際している女性を婚約者とする」
これかもしれない。これなら、恐れ多くもわたくしこと尊夕凪、該当してしまうではないか!
え、嘘、婚約者? 悟くんの……正妻になるの?
うっそおおおおおおお!
そんなことある? どっかの国のおとぎ話なんじゃ?