第9章 婚約者は誰?
なんでこんなに手厚いのか、大事に扱われるのか、採寸されてる間もずっと考えていた。悟くんはともかく奥様もこんな風にあたしに接するのはおかしい。遺言をわかった上でのこの行動。
ひょっとして、
ひょっとして、
ひょっとする?
浮かぶべき事ではない妄想が浮かんでしまった。
ありえない、ないない。んなわけない。いったん浮かんだけど、重石をつけて深く沈める。だけど、このひょっとして妄想が妄想じゃないとすれば、これまで、なんで? って思ってたこともすべて納得がいく。
あたしのひょっとして妄想は再び浮上し、にわかに暴走を始めた。
ひょっとして……もしかして……
ブレーキをかけるんだけど、かけてもかけてもそれを上回るようにアクセルがヴォンヴォン唸りを上げている。
――ひょっとして、悟くんの婚約者って……あたし?
だったりする??
いや、いや、はっはっはっ。いくらなんでもポジティブシンキング、爆走しすぎでしょ!
あたしは馬鹿な発想になんとかストップをかける。五条の曽祖父様はあたしのことも尊家のこともご存じないのだ。遺言に書きようがない。
尊家はたまに術師を輩出する家系だけど、曽祖父様がお元気でいらした時代に術師はいなかった。その事実はとうの昔に調べたではないか!