第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後

初詣……と言う言葉が嬉しかったのか、狐の目は真ん丸に戻りユラユラと揺れていたフワッフワ尻尾は動きを止めてピンと天井に向かって真っ直ぐに伸びた。

あまりにも分かりやすい狐の反応に2人は表情を綻ばせて顔を見合わせる。

そして狐に向き直りは柔らかな頭を、杏寿郎は再びフワフワな首筋に手を当てて感謝の意も込めて優しく撫でた。

「ぜひ初詣は君の神社へ参拝しに赴かせてもらう。それ以外にもこの子と2人で顔を出すので待っていてくれ」

「本当に？！」

「はい！またお会いしたいですし……こうして触れさせていただきたいです。お狐様にいただいた加護のご報告もさせて下さい」

肝試しと言うにとって恐怖な催しから思わぬ素敵な出会いを得ることが出来た。
目の前のお狐様に化かされが急斜面を転がり落ちそうになった時は肝を冷やした杏寿郎も、今では可愛らしいお狐様に終始穏やかな表情である。

「待ってる！今度は本殿で大人しく待ってるよ」

狐はそう言って2人の手にそれぞれ額を擦りつけ、ピョンと飛び上がって宙返りしたかと思うと……そこに何もいなかったかのように忽然と姿を消した。