第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
『……さん、お嬢……ん。……お兄さん!』
「んーー……あと少しだけ」
布団の中ではないのにひどく心地好く、誰かに呼ばれている気がするもののはもちろん、いつもは寝起きがすこぶるいい杏寿郎でさえ身動ぎするだけで起き上がれずにいる。
『……仕方ないなぁ』
呆れた声さえも子守唄のように眠気を誘うが、突如としてと杏寿郎の首筋をフワッフワな何かが行ったり来たりして、強制的に覚醒させられた。
「ひゃっ!!」
「何だ?!何が触れた?!」
2人して飛び起き顔を見合わせてからフワッフワな何かを探す……までもなく、目の前に真ん丸な目にフワッフワな尻尾を機嫌良さそうに揺らす、可愛らしい狐が圧倒的な存在感を醸し出して鎮座していた。
「お狐様!本当に来て下さったの……」
思わず大きな声を出してしまいキョロキョロと辺りを見回すも、つい先ほどまで起きていたはずの柱たちは全く起きる気配はない。
『それくらいじゃ起きないから安心して。改めて……お嬢さんこんばんは!お兄さんは初めまして!約束のお詫びをしに来たよ』
なんと即日で狐の足では遠かったであろう煉獄家まで遥々赴いてくれた。