第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
その際にの視界の端を横切ったのは、黄金色のフサフサな尻尾を機嫌よく揺らしながら愛らしい真ん丸の瞳をキラキラと輝かせる狐の姿。
『ごめんね、久しぶりに人の姿を見たから遊んじゃった。このお詫びは必ずするから』
脳内に直接響く不思議な幼子のような声はやはりにしか聞こえていないようで、杏寿郎はもちろんしのぶや嫁たちは何の反応も示していない。
これ以上不思議な出来事で皆を心配させることが憚られ、は何も言葉を発することなく、こっそりと可愛らしい狐に手を振ってみると……狐は笑うように目を柔らかく細めて夜の山へとフサフサ尻尾を揺らしながら姿をけしていった。
「?何か見つけたのか?」
「あ、あの。可愛らしい狐がそこにいらっしゃいまして。神社の神様でしょうか?」
その言葉に杏寿郎は後ろを振り返って確認するも、既に山の中に姿をくらました狐の姿を目にすることは出来なかった。
「狐か……あまりにもが愛らしいので、ここの神様が君を見に来たのやもしれんな。悪戯は些か度が過ぎたように思えるが」
突拍子もないの話を笑うこともせず、真剣に取り合って抱きすくめる力を強めた杏寿郎の優しさに心が満たされ、もそれに応えるようにギュッと杏寿郎の襟元を握り締めて胸に顔を埋めた。