第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
「杏寿郎君?!危ない……」
必死に手を伸ばし杏寿郎の手を掴もうとしたところでの体は浮遊感にみまわれ、温かな感覚が4つ全身の至る所に感じとれた。
「!俺はここだ!そちらには誰もいない!こっちを見なさい!」
キョトンと急斜面の方向へ手を伸ばしたまま……は声のする方を振り返った。
「杏寿郎君……え、でも先ほどまでそこに杏寿郎君が……あれ?しのぶさん、奥様方も見られましたよね?鏑丸さんも……」
同意を求めるも返ってきたのは否というものばかり。
「だって本当に……私、嘘なんて付いてないですよ?」
「君がこんな嘘を付くなんて誰も思っていない。人を心配させるような嘘を付かないと知っているからな……君が1人きりだった事も今の出来事も聞きたいことは山ほどあるが、もうここから離れよう。何かあってからでは遅い。恥ずかしいかもしれんがこのまま帰らせてくれ……」
抱きかかえられたままギュッと体を寄せられ杏寿郎の言葉通り恥ずかしさがを覆っていくも、よく分からない状況に不安が広がっていくのも感じ取れ、は素直に頷いて肩口に頭を乗せてしがみついた。