第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
鏑丸にはもちろん、しのぶや嫁たちにはどう目を凝らしても杏寿郎の姿など見えない。
それもそのはず、杏寿郎はを脅かすなど可哀想な事は出来ないと本殿の前で待っているのだから。
「一緒にって……奥様方、すぐに煉獄さんを呼んできてください!私はちゃんを連れ戻します!このままじゃ……」
「お任せ下さい!私が煉獄さんを呼んでまいります!まきを、須磨。しのぶさんと姫ちゃんの保護をお願い!」
姿なき杏寿郎を追い掛けるを救い出すため、それぞれが全力で動き出した。
「杏寿郎君、待ってください!そちらは急斜面らしいですよ!危ないので一緒にしのぶさんたちの所へ戻りましょう?怪我をしては大変です」
にしか見えない先を歩く杏寿郎の金と赫の髪は機嫌よく揺れ、の声なんて聞こえていないようだ。
いつもなら振り返り手を握って引き返してくれるのに、その様子は一切感じられない。
「杏寿郎君!本当に危ないです!そっちへ行かないで……戻ってきて下さい。置いていかないで」
さすがにおかしいと思い始めたが足を止めると、杏寿郎は振り返って笑顔を向けた……かと思うと、急斜面があるであろう場所の1歩手前で突然体を後ろへ倒してしまった。