第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
優しく頭に手が置かれたと思った。
その手に反応して頭を上げようとしたのに、一瞬後にはの頭から手の温かさがなくなり……ついでに樹の気配も忽然と消えてしまった。
慌てて辺りを見回すも樹の姿はやはり見当たらず、残されていたのは不自然に石畳の上に不気味に置かれた蝋燭だけだ。
「い、樹さん?どこに……天元君ですよね?!1人ぼっちは怖いので樹さんを返して下さい!」
シン……ーー
と返ってきたのは静寂のみ。
「1人怖いです……とりあえず蝋燭だけでも……うぅ……杏寿郎君、怖いです。誰か」
蝋燭を手に取ってから縋る相手を探すように視線をさ迷わせ始めた時……ポンと誰かに肩を叩かれた。
樹を返してくれたのだと笑顔で後ろを振り向くと……血走った目を片方黒髪で隠した女がニヤリと妖しく笑っていた。
「ひっ……いやぁーー!来ないで下さいっ!ぼ、木刀……蝋燭が邪魔で……」
「一緒に逝こう……」
「ヤダヤダ!杏寿郎君ーー!」
可哀想に…… は蝋燭の火が消えそうな勢いで、本殿へ続く薄気味悪い道を全力で走り去っていった。
「……何だァ。罪悪感半端ねェな。おぉい、宇髄!桐島返してやれ!あまりにも可哀想だろぉがァ!」
「え、やっぱり?だが今更返してもなぁ……」
鬘をとった実弥の隣りに樹の口を押さえた天元が降り立ち、が消えて行ってしまった方角を呆然と見つめる。
「あそこまで派手に怖がるとは思ってなかったんだって」
きっと後で天元は杏寿郎に叱られるだろう。