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月夜の欠片

第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後


ピタリと止まった樹に合わせも立ち止まって、杏寿郎より少し低めの位置にある棗を彷彿させる切れ長の目を見つめて話を続けた。

「棗姉ちゃんは小さな女の子を身を呈して守ってくれていました。私がその現場に到着した時……実弥お兄さんの腕の中で息を引き取った直後だったようです。私があの時に決戦時と同じ力量だったならば、棗姉ちゃんは確実に助けられていました」

蝋燭を両手で持ちながら本殿の方角へ体を向けゆっくり歩き出すの後を慌てて追い掛け、不安定に揺れる蝋燭を受け取った。

「そうか。棗は……どんな最期だった?思い出すの辛いかもしれないが、それだけ教えてくれ」

「いえ、大丈夫です。酷い傷だったので痛むはずなのに……穏やかなお顔をされていました」

酷く悲しみをたたえているはずの顔色なのに、涙は寸前のところで押し留まっている。

「助けることも間に合わず、最期を看取ることすら出来ず申し訳ございませんでした。樹さんの大切で失いたくなかった方を……守ることが出来ず本当に……」

「違う。謝って欲しくて棗の事を聞いたんじゃない。その……全力で助けようと駆け付けてくれてありがとう。あと、不死川さんの屋敷で八つ当たりして悪かった……」

自分に下げられた頭にポフと手を乗せて上げるように促した……その現場を見られているとはつゆ知らず。
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