第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
想像の遥か上を超えた会話の内容に杏寿郎の時間がピタリと止まり……おずおずと瞳を潤ませながら見上げてくるの視線で我に返って、驚くほどに熱くなった体を抱きしめた。
「あの、杏寿郎君。怒っていませんか?勝手に聞いてしまったこと……」
「恥ずかしい内容ではあるが怒るわけがないだろう?人一倍恥ずかしがり屋のが、意を決して聞いてくれたのだと思うと……何を置いても何よりも嬉しい」
杏寿郎にが今まで直接聞かなかったわけではない。
他にも何か術はないか……と何度か聞いていたものの、いつも返事は同じだった。
『無理をする必要はない。今のままで十分だ』
とを気遣い、初めに教えてくれたこと以上のことは控えてくれていたのだ。
その気遣いは嬉しかったが、その気遣いにどうにかこうにか報いたいという思いが日に日に膨れ上がり嫁たちに……それこそ清水の舞台から飛び降りる勢いで聞くに至った。
それを杏寿郎も何となく察したので、怒るなんてとんでもなく愛しさが増しただけだ。
「よかったです。高度なものを須磨さんが教えてくださろうとしたのですが、それは何故か雛鶴さんとまきをさんに全力で止められていました。何だったのでしょう?」
「ふむ、高度なもの……俺も詳しくはないので分からんな!2人が止めたのならば知らなくていい事なはずだ、深く考えないでおこう!」