第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
「……嘘だろ。早く言えよ!ちょっとお前ら……姫さんの様子見てきてくれ!落ち込んでたら慰めてやってくれると派手に助かる!」
『お任せ下さい!』
喜び勇んで台所へと掛けて行く嫁たち3人の背を見送り、天元は居間に到着するなり力なく壁にしなだれかかった。
「もっとあるだろ……高級食材とか玉露とかよぉ。なんでラムネなんだ」
「あの子は娯楽や嗜好品といったものをほぼ知らずに成長してしまったので、未だにラムネと言えど贅沢品だと思い込んでいるフシがある!随分前に買ったそこに吊るされている風鈴1つですら、毎日飽きずに眺めるくらいなのでな!愛らしいだろ?」
杏寿郎の言葉に涼やかな音を奏でている風鈴に目をやる。
何の変哲もない赤い金魚の描かれた風鈴は、随分前に買われたはずなのに今そこに吊るしたばかりのように綺麗で、どれほどがそれを大切にしているのかが一目で分かった。
「なるほどなぁ……そりゃあ愛でたくもなるわな。姫さんに悪ぃことしちまった」
「いや、それほどは気にしていないはずだ。元々宇髄と酒をと俺に言っていたからな。……それにしても遅いな。すぐ分かるところにラムネは置いていたはずだが」
とりあえず壁にしなだれかかった天元を卓袱台の前に座らせ、2人して帰りの遅いと嫁たちを待つこととした。