第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
思わず手が止まりそうになるも、時間が経てば経つほど手が動かなくなると自分で理解しているは肩に掛かっている浴衣の襟元を指で摘み、ゆっくりと布団へ落としていった。
今にも恥ずかしさで顔を隠したくなる衝動を必死に抑え、杏寿郎の胸元にあった視線を炎を彷彿させる温かな瞳へと移動させる。
「少し……お待ち下さい。私も脱ぎますので」
「焦らなくていい、の心の準備が出来てからで問題ないからな」
いつも向けてくれる優しい瞳と言葉にほんの少しの勇気をもらい、は頷いて自分の体を覆っている浴衣を見下ろして帯の結び目を掴み……一思いに引っ張り目にも止まらぬ速さで一気に浴衣を脱ぎ捨てて杏寿郎の胸の中へ飛び込んで行った。
恥ずかしいからこその行為だと分かっているが、あまりの思い切りの良さに杏寿郎から小さな笑い声が漏れる。
「フフッ、恥ずかしさから速くなるとは思いもしなかった。大丈夫か?」
「自分から脱ぐのが初めてで……思いの外恥ずかしかったんです。自分自身でもこんなに速く動けることに驚いています」
杏寿郎を見上げる顔は頬が薄紅色に染まりながらも、本当に自分の素早い動きに驚いているようで目が丸くなっていた。