第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
寝室へ到着するまでも到着して杏寿郎が布団の用意をしてくれている間も、の体は緊張で強ばり絡繰人形のようで杏寿郎が笑いをこらえるほどである。
「、こっちにおいで」
一点を見つめて動きを止めていたの体は杏寿郎の声によって時間が動き始め、まだ緊張の全てが解けていないものの呼ばれた嬉しさが勝り、布団の上に座り腕を広げている杏寿郎へ吸い寄せられるように笑顔で身を滑らせて行った。
腕の中でホッと息を着いたの頭を撫でていると、遠慮気味におずおずと柘榴石のような瞳がお目見えしてきたので首を傾げてどうしたのかと尋ねる。
すると小さな声ながらもハッキリとした声音が杏寿郎の鼓膜を優しく刺激した。
「杏寿郎君の浴衣……私が解いてもよろしいですか?」
「あぁ、では頼めるだろうか?」
目を緩やかに弧を描かせた杏寿郎へふわりと笑みを返し、は緊張で僅かに震える手を杏寿郎の背へと回して帯の結び目に指を掛ける。
さすがに浴衣の帯に手間取ることはなく何度か手を動かすと何の抵抗もなくスルリと帯が解け、それに伴って襟元も緩まり現役当時と変わらぬ引き締まった胸板が目に映った。