第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
「杏寿郎君がお風呂から戻られたら寝室にお誘いしたらいいのでしょうか?あ、明かりはどうすればいいのでしょう?!浴衣は私が脱がせて差し上げればいいのでしょうか?……予行演習なんて出来ませんし雰囲気作りなんて……」
表情を忙しなく変化させた後、卓袱台へと突っ伏してしまう。
そんな不思議な行動を一部始終目にしていた風呂上がりの杏寿郎は笑顔を浮かべ、困り果てているに歩み寄って力なく丸まっている背中を後ろから抱きしめた。
「雰囲気など考えなくて大丈夫だ」
「え?!杏寿郎君?!……もしかしなくても……今の独り言聞かれていましたか?」
弾かれたように飛び起きたに更に笑みを深め、杏寿郎は額に口付けをして何の迷いもなく熱くなった体を抱き上げる。
「可愛らしい悩みだな。俺も思うようにするからも思うようにして構わないんだ。君の行動に愛しさが増したとしても幻滅など絶対に有り得ないので、深く考える必要はない」
「あ……ぅ、はい。杏寿郎君……寝室に連れて行って下さい。早く杏寿郎君の肌に触れたい」
顔を胸元に隠しながら言う様に杏寿郎の庇護欲が掻き立てられ身悶えそうになりながら、どうにか平静を保ってギュッと体を抱きしめ直した。
「お易い御用だ、俺もの肌に触れたい」