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この身は君しか愛せない【ONE PIECE】

第2章 番外編 初めてのお泊まり


おじゃまします、とそれだけでも震えそうになる声を制御しながらぎりぎり彼に聞こえるだろう声で言う。
こんなところで震えていては年上なのに恥ずかしいじゃないか。
いや、虚勢はろうとするくらいに経験がないからこうなっているのだが。

「リビングあっち」

ついっと指差された方のドアへと進む。

(ひろー…)

小さなワンルームならばすっぽりと入ってしまうだろう広さのリビングに立ち止まる。こんなのテレビの芸能人のお宅訪問でしかみたことがない。

「なに突っ立ってんだ」

とん、と背中を突っつかれて動き出す。圧倒されてたと言えばそうか?と小さく首をかしげてきょろりとリビングを見渡す男に押し黙った。
ちくしょう可愛いな。というかこのお家は規格外ですから。どこぞの金持ちだよ。

革張りの大きなソファセットの隅っこに腰かける。座り心地の良い張りのある座面。ぜひとも寝転がってみたい。沈む柔らかさよりも張りのある適度な固さを好む私からしたらここをベッドにしたいくらいだ。

「適当で悪いな」
「お構い無く」

置かれたコーヒー。トレイにはミルクとシュガー。それにお茶請けの小さなチョコもあった。

「そつなくこなすねぇ」
「?」

私なんて挨拶すら必死だったと言うのに。



付き合うことになってから数回会っている。
まぁ暫くはローの帰国やらなんやらで忙しく電話のみの日々が続いたが、それもようやく落ち着いてきた。空港まで迎えに行った時は彼の仲間もいるのにも関わらず熱烈なハグを貰ったのは記憶に新しい。

会うのは日中なこともあれば夜に飲みにも行く。毎度紳士的に自宅まで送り届けてくれているが、名残惜しそうに見つめる彼のその視線の意味を知らぬふりして帰る毎日。大人の恋愛はそれだけではないのは重々承知しているが、如何せん仕事の都合上タイミングが味方しなかったのだ。
そんなこんなで痺れを切らしたのだろうローが自宅へと誘ってきた。珍しいつまみと酒を土産にもらったから一緒に、と。




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