第1章 世界で一番幸せ【リヴァイ】
間違いない、あのときの花だ。
便箋に綺麗に貼り付けられた押し花に、そっと指先で触れる。
あの日以降、二人の関係に変化があったわけではない。
ユズアは相変わらず部下としての態度を崩さなかったし、リヴァイもそれ以上踏み込むことはなかった。
それでもいつの日か、ただの男女として隣に立てる日が来るならば、ユズアを笑顔にするのは自分でありたいと、そう願っていた。
『わたし、ユズア・ティファートは、本当に幸せでした』
リヴァイはもう一度、手紙の最後の一文を読み返した。
そうか、これは嘘でも気休めでもない、ユズアの本心からの言葉なのだ。
そのことを、ユズアはこの花で伝えたかったに違いない。
便箋から押し花をはがして、手のひらに乗せる。
再び目を閉じると、浮かんできたのは先ほどまでリヴァイを苛んでいた最期の映像ではない。
白い花を耳に飾り、世界中の幸福を一身に集めたような表情で微笑むユズアだった。
そう、間違いなく、あの時あの場所で、彼女は世界で一番幸せだったのだから。
【世界で一番幸せ 完】