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ひと匙だけじゃ物足りない

第4章 指パッチン


彼の指から奏でられるキリッとした音。目が覚めるようなその音に、なぜだかいつの間にか虜になっていた。

「夏目くんって指パッチン綺麗だよね」
「ン?藪から棒にどうしたノ?確かに特技で答えるくらいにはできるけド」
「夏目くんの指パッチンの音いいなぁ、って思って。私がやるとかっすかすだもん」

えいっ、と私が指を鳴らそうとしても彼のようにはならない。空振りしたような音がしただけで苦笑いが零れた。

「フフ、那乃花ちゃんらしいネ。そうダ、これが好きなら催眠術でも試してみル??きっと気に入るヨ」
「催眠術??」

なんかちょっと怖いけど…そう口にしようとするも少し興味もあったため返事はうんの方にしてみた。夏目くんなら安全性は保証できるし。

「じゃあ決まりダ。まずは体をほぐそっカ。横になって深呼吸しテ、肩の力から抜いテ」

言われた通りにベッドに横になり深呼吸を何度か繰り返す。いい子、と上から夏目くんの優しい声が降り、心地よい体温を纏った手のひらが髪から頬を撫でた。その暖かさに安らぎを覚え、頭の中がどんどんふわふわとして、思考にモヤがかかっていく。
段々と解れ、寝そべるだけの状態になると、彼はその調子と言った様子でそのまま優しく手のひらで安心させるように撫でていき、形の良い唇を耳元に近づけた。

「そのままボクに身を任せて」

パチンとはっきりした音が脳内に鳴り響く。
心臓はバクバクしているものの体はふわふわと力が入らないまんま。

「な、夏目くん、なにこれ」
「大丈夫だヨ、那乃花ちゃんは気持ち良くなるだけだかラ」
「は?っん…」

言葉を遮るように彼は唇を重ね、僅かに空いた隙間から舌を突っ込んだ。すぐさま彼の舌に捕まって彼の手で耳を押えられながら、舌同士が絡まる音を聞かされる。恥ずかしさで逃げ出したいながらも、確かにそこに快感があるから性欲がどんどん引きづり出される。相変わらずキスだけでその気にさせるのはお手の物らしい。
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