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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第11章 昨日と明日と明後日と




「・・・すみません」
「謝らないでください。理性はちゃんと持っていますよ」

そんなの分かってる。
その気になれば、いつだって私なんかねじ伏せられる。

「・・・・・・」

今まで、そんな男達をごまんと見てきた。
この時点でどれだけ彼が理性を働かせているか。

・・・はたまた、今までの男達が異常で、彼が普通なのだろうか。

「抱きしめるだけは、どうです?」

彼はベッドに腰を下ろすと、横に座るように軽くベッドを叩いて。
触れないのは優しさなのか、理性の制御の為か分からないが。

「・・・大丈夫なんですか」

触れるということがどういうことか。
それだけで恐怖を感じる事も、快楽を覚えることもできる。

その状況だけで、彼は辛くないのか。

「それはこちらの質問ですね」

彼が気にするのも分かる。
私は快楽よりも、恐怖を感じる人間だから。

でもこの状況なら、少しくらいは自分の欲を出してもおかしくはないし、出しても良いのに。

「ひなたさんが嫌がることは、したくありませんので」

・・・この人は、本当に。
人の心を柔らかくすると言うのか、警戒心を解くのが上手いと言うのか。

「そんな事で良ければ・・・」
「ひなたさんにとっては、そんな事ではないでしょう?」

泣きたく、なる。
自分の醜さ、愚かさ、未熟さを痛感して。

そして、やはり彼には好意を抱いていると、実感もする。

「ひなたさん」

彼は座っていたベッドの壁際の方へ転ぶと、両手をこちらに伸ばした。

私の逃げ道を確保しつつ、私のペースで距離を詰めさせてくれる。

・・・そこまで丁重に扱われるような人間でもないのに。

「・・・・・・」

吸い込まれるように、彼の腕の中へと体を進めて。
時折鳴くベッドが、心拍数を上げていく。

その理由は緊張なのか、恐怖なのか、それとも。



 
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