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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第11章 昨日と明日と明後日と




「し、失礼します・・・」

ゆっくりベッドに体を預けると、枕付近に伸ばされた彼の腕の上へと頭を下ろした。

どこか懐かしくも感じる匂いに、昔の光景が脳裏を過って。

「力、抜いてください」

手は拳を作ったまま、体の前で強張っている。
それが何を意味するのか互いに勿論分かっていて。

解けない警戒心を彼は笑ってくれるが。
その優しさが普通でないことは十二分に分かっているつもりで。

「・・・透さん」
「はい」

小さくか細い声で呼んだが。
彼は聞き漏らすことなく、呼びかけに優しく返事をした。

「そのまま・・・抱きしめてもらえますか」

自分でもどうなるのか分からない。

いつでも動ける体勢ではないこの状況で、彼が優位な状況になったら。

僅かに見え隠れする不安が恐怖を煽るが、小さく深呼吸をしてどうにか落ち着かせた。

「・・・分かりました」

何故か少し迷いを見せたが、彼は了承の言葉を口にすると、ゆっくりと静かに、様子を確かめながらもう一方の腕で私を包み込んだ。

締め付けはしない。
言葉通り、包み込まれている。

体が密着し、彼の鼓動も聞こえて・・・。

「・・・と、透さ・・・」
「言わないでください」

・・・ああ、本当なのか。
いや、疑っていたわけではないが。

実感した。

彼の鼓動が異常にも感じる程、早く大きく脈打つのを肌で感じ、私への気持ちが本物なのだ、と。

ただ少し異常さを感じ取ってしまった為、彼に大丈夫かと問おうとしたが、本人から拒否されてしまって。

その言葉の奥に照れが隠れていることも、声色で伝わってくる。
だからこそ、それが私にひどく移った。

「緊張くらい、させてください」

しては駄目なんて言ってないのに。
あまり見せない彼の人間らしさに触れられたようで、僅かだが笑みが漏れた。



 
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