第10章 新婚旅行(K.A)
部屋に戻るとすでに用意されていた豪勢な料理。
向かい合って座り、瓶ビールを注ぎ合い照れながら「乾杯」
目の前の料理だけで全部かと思っていたら後から温かい料理が運ばれてくる。その都度仲居さんは料理の説明をしてくれる。
彼女は味付けや調理法を尋ねながら、ひとつひとつに感動しながら食べている。
「奥様はお料理が好きでいらっしゃるんですねえ。なんてお勉強熱心な」
「小さいけどカフェをしてるんです。もう少しお食事を充実させられたらなと思っていて」
「あらまあお店を。こんな素敵なご夫婦のお店行ってみたいものですわねぇ」
多くを話す必要はなさそうな他愛もない会話。彼女は「隣の県に来られた時はぜひ」と簡単に場所を伝えていた。
「ね、和輝くん。冷酒飲もうよ」
「いいねえ。でも、ほどほどにしといてね」
「?」
「後があるから」
すぐに意味が理解できないようで「後…?」と少し考え込む。
「俺の好きにしていいんでしょ?」
ビールでほんのり赤い彼女の顔が一気にぼんと赤くなった。
ちょうど最後のデザートを持ってきてくれた仲居さんに「ごちそうさま」と伝え最後に冷酒を2合頼んだ。