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インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]

第20章 身を焦がす想いに氷とシャワー【side真波】



「ちょっと、離して……」

は抗議したが、口とは裏腹にドキドキする気持ちを抑えられずにいた。

「きっとばちが当たったんだな……
ふたりから逃げた上にキスしようとしたから……
でもこうやって抱きしめることができたから、もう思い残すことはないや……
久しぶりだな……さんの匂い……雨の匂いと混ざる……」
「……風邪ひいちゃうよ?
早く帰って身体拭かないと。
また明日から練習……あるんでしょう?」
「オレのことなら大丈夫です。
自転車はオールウェザースポーツなので。
さんは……坂は好き?」
「は?何言ってるの?」
「いいから、答えてください」
「全然好きじゃないけど……坂の
上の高い場所は好きだよ」
「同じだ……だから最初に会った時、山の上で歌ってたんすね?」
「うん……あそこはひとりになれるお気に入りの場所だし……
真波くんには知られちゃったけど、真波くんだけならいいかな」

真波はせっぱつまった表情になった。

「さん好きです。
初めて会った時から、オレの心はずっとあなたの歌に……全てに捕らわれている。
すくい上げてくれることができるのはあなたしかいないんです。
……オレのことをさんも好きになって欲しい。
オレにできることなら、何でもするから」
「真波くん……」
「さん……すごく心臓がバクバクいってますね。
オレもですけど……
少しはオレのこと気にしてくれたり、するんですか?」

は思った。
気にしてる……
あの丘での告白からずっと……
キミのことを思い出さない日はないよ……

「こ……こんな抱きしめられたら、好きじゃなくてもドキドキするに決まってるじゃない!
ホント、インハイの時といえ、ずるいタイミングでこーゆーことするんだから!
ほら、帰るよー!」

暗闇で分からないことに感謝しつつ、真っ赤になったは真波を無理やり引き剥がした。

真波が名残惜しそうな、捨てられた仔犬のような表情を浮かべるのを見て、は僅かな罪悪感に駆られた。
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