インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第19章 全てを、キミに。【side東堂】
途方にくれていたの手を引いてくれたのは……
「東堂くん……!」
「やっと、やっとふたりきりになれたな、さん……
オレはこの時をずっと待っていた!
さあ、どこでも回ろうではないか!
この東堂尽八がきっとどこでも連れてってやろう!」
「ほかのふたりに連絡する気はないみたいだね」
「当然だ!
これが当初の予定だったのだからな!」
そう言っていたずらに微笑む東堂は美しく、もふたりだけのこの状況に胸が高鳴るのを感じていた。
「どこに行きたい?」
「うーーーん……」
「そう言えばさっき金魚すくいがしたいと言っていたな!
行ってみよう!
金魚もさんにすくわれるのなら、思い残すことはないだろうな!
ついでにオレの気持ちも一緒にすくい取ってくれると嬉しいのだがな!ハッハッハ!」
いつもよりさらにテンションの上がった東堂とは金魚すくいの屋台まで辿り着く。
大きなビニールプールの中でたくさんの金魚たちが窮屈そうに、しかし涼しげに泳いでいた。
「よーーーし」
さっそくトライするだが、たくさんいる割に金魚たちはすばしっこくてなかなか捕まらない。
ついに網の端から小さな穴が空いてしまった。
「どれ貸してみろ」
東堂は穴の空きかけた網で次から次へと金魚を捕まえていった。
「すごーい!」
「オレの動きにはムダがない……オレの手さばきは金魚さえ眠る……
なにしろオレはスリーピングビューティーの異名を持つ天才クライマーだからな!ワッハッハ」
「ちょっ……うるさいんだけど。
クライマーは関係ないし。
集中しないとさすがにもう……」
やっと決定的な穴が空いた。
「ほらぁ」
それでも屋台のおじさんは感嘆した。
「すごいな色男!
18匹!新記録だ。
このねーちゃんの小さな手には持ちきれないくらいの大量のみやげができちまったな!
よかったな、ねーちゃん!」