インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第18章 ハンターチャンス【side荒北】
途方に暮れていたの手を引いてくれたのは……
「荒北!」
「悪かったな、オレで」
「そんなことない……」
は安心しきった顔で荒北を見上げた。
その顔を見つめながら、荒北は日暮れまで眠っていた野獣の本能が目覚めだすのを頭の片隅で感じていた。
「おめー、具合ってか、機嫌悪そうだったけど、大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だよ。
もう、どうして機嫌悪かったかとか、忘れちゃった。
今はお祭り、楽しみたい気分なんだー」
「!じゃあ見て回るか。
今度ははぐれんなヨ。
ちっこいんだから、一度見失いそうになるとめんどくせーんだよ」
「……そこは横幅があるから、見付けやすいとかなんとか言うトコじゃないの?」
「……そんなこと思ってねーよ。
ほっせーんだから、もっと食え。
ホラ、あのたこやき買ってやっから。
それとも焼きそばのがいいか?」
めずらしく優しい荒北に連れ回される形になった。
握った手は放されてしまったが、が遅れるたび、何度も振り返ってはその度ゆっくり歩いてくれる荒北には胸の高鳴りを感じ始めていた。
「そろそろ花火が始まる時間だな。
この先に開けた川岸がある。
そこからよく見えるから行くぞ」
「うん。花火見たい。
前からずっと楽しみにしてたの」
しかし、言葉とは裏腹にはうつむいてしまって動かない。
「どした?
……オイ、お前、その足ーーー!」
の両足はゲタの鼻緒が指に食い込んで、痛々しく腫れ上がってしまっていた。
「ンでこんなになるまで何も言わねーんだ!バァカチャンが!
そんなにオレって信用ないのかよ?!」
側にあったベンチに乱暴にを座らせると、ゲタをの足から抜き取った。
「え?何」
こいつまさか裸足で歩けとか言い出すんじゃないでしょーね……
が抗議の声を上げようとすると、荒北は後ろを向いてしゃがみ込んだ。
「乗れよ。
花火がよく見えるところまで連れてってやっから」