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インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]

第16章 インハイスタート!


優しくなんてない。
素直に応援もできなくて……
私がもっと素直な性格だったら、答えを出せていたら、真波くんも余計なこと考えずにひたすら走れたかも知れないのに……

「また変なこと考えてます?
どんなにつらくても、さんのことと、自転車のこと考えてる時だけは……オレは満たされた気持ちになれるんです。
さんがオレにしてくれたことで、間違ったコトなんて、ひとつもないすよ」
「真波くん……ありがとう……」
「そう思うなら、次オレが優勝したら、その時はキスさせてください」
「要求のハードルが上がってるじゃない!」
「……ばれたか」

表彰式の後。

重苦しい空気が箱根学園全体にのしかかっていた。

真波と一緒に、箱根学園メンバーと合流したものの、何と言っていいか分からない。

東堂がぽつりと呟いた。

「そうか、さんが真波を発見してねぎらってくれたのだな」
「うん……私じゃ何の力にもなれなかったけど……」
「いや、お前しかいねーだろ」

荒北もぼそりと呟いた。

「そうだな、この三日間オレたちを見ていてくれて、オレたちがインターハイに賭けていた思いは伝わったのではないか?」
「伝わったよ……自転車っていうひとつのことに一生懸命になって、本当にかっこよかった!」

レースが終わって、初めては痛々しい笑顔を作った。

東堂は胸を痛めた。

可愛過ぎる……
この勝利の女神がついていながら、オレたちは勝つことができなかった。
このコに勝利を献上することができなかった……

荒北もやりきれない悔しさに駆られていた。

例え次優勝したとしても、こいつに勝利を見せてやれる中にオレはもういねェ……

真波はふたりとはさらに異質な思いでいた。

さん……すみません……そんな悲しそうな顔で笑わせてしまって……
オレが……オレがトドメを刺した……


東堂が恐る恐る切り出した。

「で……どうなのだ?さん。
インターハイが終わったら、オレたちに話してくれることがあると約束していたと思うが……」
「ああ、そうだったね。
でもそれは優勝したら……っていう条件が付いてたはず」
「やっぱ、そー言うわけェ?!」
「そりゃないぜ、さん!!」
「簡単に手に入るひとじゃないのは分かってましたけど……」
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