インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第16章 インハイスタート!
気が付いたら、そこに真波くんはいなくなっていた。
ハコガクの人たちが一生懸命探してるみたい。
私は探さなきゃ、カレがそんなこと望んでなくとも、と思った。
人がまばらなほうへと探して進んで行く。
真波くん……一体どこに消えちゃったの……
まさか樹海に行っちゃったんじゃないでしょうね。
あっ、あれは真波くん……!
林を抜けて、景色の開けた場所で真波くんはひとり、立ち尽くしていた。
「ごめん、ひとりになりたかった?
でも見つけちゃったよ……」
真波はの姿を認めると、下を向いて項垂れたまま言った。
「さん……オレは勝つことができませんでした。
みんなの走りも台無しにしました。
せっかくあなたも勇気を出すって言ってくれたのに……」
「そんなことない……そんなことないよ!
いっぱい勇気をもらったよ!
真波くんほどかっこいいひとはあの場にいなかったよ……」
「さん……」
真波くんの目から涙が一筋伝った。
「オレ……オレ、勝ちたかった……!
自分が負けるなんて考えたこともなかった。
それくらいオレにとっては当たり前のことで……自然なことで……昨日まではそうだった。
でも、もう……」
いつしか私は一緒に泣きじゃくりながら、真波くんを抱きしめていた。
「明日からだってきっと勝てるよ!
もう負けないで、前より強くなれるよ!
そうだ!来年だってあるじゃない。
まさか、もう諦めてしまったわけじゃないよね?」
どこかで聞いたことのあるセリフだ……と頭の片隅で思いながら、問いかける。
真波くんは腕を私の背中に回しながら、
「当たり前です。
オレはもう二度と負けません。
さん……オレのことを、ずっと……オレが勝つところを、これからずっと見ていてくれますか」
「うん、絶対。
キミが走るなら、世界中どこにいても飛んでいくよ」
「やった。それとこの状況……
勝ったら抱きしめさせてくれるって約束だったのに、ラッキーだな」
「あ……これはそのつい……ノリで……」
「分かってますよ。
こんな状態のオレじゃ、こうしてくれるしかなかったですよね。
さんは優しいから……」