• テキストサイズ

インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]

第16章 インハイスタート!


インターハイ三日目のラスト、会場は屋外だというのに、むしろ真夏の屋外だからか、ものすごい熱気に包まれていた。

「もうすぐゴールに入ってくるって。
インターハイ総合優勝者が決まるわ。
普通に考えたら、トップでゴールするのはエースクライマーである東堂くんなんだろうけど、何が起こるか分からないのがロードレースだからね」

セラが解説する傍らで、観客が叫んだ。


「ゴールを競うのは……一年生ふたりだ!
箱根学園真波山岳と総北小野田坂道だってよ!」

「ほらね。真波くんがゴールするところ、約束通りしっかり目に焼き付けてあげなよ」
「うん。私信じてる!」


やがて、ゴールに飛び込んできたのは、真波くんと総北と書かれたジャージを着た、メガネをかけた選手。

直感で、この人が真波くんの言ってた魅力的なライバルだと分かる。


ふたりはほぼ同時に突っ込んで、そして、最後の最後に数センチ差で勝利したのは……


「ゴーーーーール!!
インターハイ総合優勝者は小野田坂道選手!!」


真波くんはわずかに顔を傾けて、ほんの少しだけ微笑みながら、

「キミと走れてよかった……」

と、ささやくように優勝者と言葉を交わした。

次の瞬間崩れ落ちた真波くんを見て、私は時が止まったかのような感覚を味わっていた。

ハコガクの人たちに囲まれ、介抱される真波くんを遠くから見つめながら、真夏なのに背筋が凍えて、寒くてたまらない。

「セラ……」

私はいつの間にかセラの手を握っていたようだが、やはり
「……ほんのわずかの力の差が命運を分けただけ……
あのふたりの心の強さには、差なんてなかったと思うよ……」
「そうだよね……真波くんは誰よりも山が好きで……頂上の景色を最初に見たくて、そうして生を実感したいって、命を知りたいって、それだけだったのに……」


手に感覚はなかった。
/ 118ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp