インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第16章 インハイスタート!
インターハイ三日目のラスト、会場は屋外だというのに、むしろ真夏の屋外だからか、ものすごい熱気に包まれていた。
「もうすぐゴールに入ってくるって。
インターハイ総合優勝者が決まるわ。
普通に考えたら、トップでゴールするのはエースクライマーである東堂くんなんだろうけど、何が起こるか分からないのがロードレースだからね」
セラが解説する傍らで、観客が叫んだ。
「ゴールを競うのは……一年生ふたりだ!
箱根学園真波山岳と総北小野田坂道だってよ!」
「ほらね。真波くんがゴールするところ、約束通りしっかり目に焼き付けてあげなよ」
「うん。私信じてる!」
やがて、ゴールに飛び込んできたのは、真波くんと総北と書かれたジャージを着た、メガネをかけた選手。
直感で、この人が真波くんの言ってた魅力的なライバルだと分かる。
ふたりはほぼ同時に突っ込んで、そして、最後の最後に数センチ差で勝利したのは……
「ゴーーーーール!!
インターハイ総合優勝者は小野田坂道選手!!」
真波くんはわずかに顔を傾けて、ほんの少しだけ微笑みながら、
「キミと走れてよかった……」
と、ささやくように優勝者と言葉を交わした。
次の瞬間崩れ落ちた真波くんを見て、私は時が止まったかのような感覚を味わっていた。
ハコガクの人たちに囲まれ、介抱される真波くんを遠くから見つめながら、真夏なのに背筋が凍えて、寒くてたまらない。
「セラ……」
私はいつの間にかセラの手を握っていたようだが、やはり
「……ほんのわずかの力の差が命運を分けただけ……
あのふたりの心の強さには、差なんてなかったと思うよ……」
「そうだよね……真波くんは誰よりも山が好きで……頂上の景色を最初に見たくて、そうして生を実感したいって、命を知りたいって、それだけだったのに……」
手に感覚はなかった。