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インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]

第16章 インハイスタート!


一日目のゴールは人だかりでいっぱいだったので、私とセラはゴールの数百メートル手前で見ていた。


歓声が沸き起こり、最初に入ってきたのは荒北とその後ろにエースの福富くん……それから、千葉の総北高校の選手がふたり、雪崩れ込んできた。

「先頭で来てくれた!」

セラが隣ではしゃぐ。
 
汗だくで目をぎらつかせた荒北はまるで野生に放たれた獣のようで、私は今朝の告白の時も、彼が今とよく似た目をしていたことを思い出した。

ううん、今朝だけじゃない。
私は彼と出逢ってから、幾度となくこのまなざしに晒されてきた。

ただ、気付こうとしなかっただけ……


瞬間、全力を出しきったであろう荒北の背後から福富くんが飛び出す。

この時点では、総北高校と全くの横並びになっていたから、荒北は悔しそうではあったけど、自分の役目は果たせたと言わんばかりに失速する。

ロードレースってゴールをとることに意義があって、皆それを目指すものだとばかり思っていたけど、荒北はどうやら自分でゴールをとることに意味を感じていないようだ。

でもエースナンバーの福富くんにゴールをとらせる為に、ひたすらぎりぎりのところで一生懸命に走ったはずの、その苦しそうな顔……嫌いじゃないな。

何にでも無気力な今時の若者なのかな、って印象だったけど、荒北、キミはこんなにもひとつのことに一生懸命になるんだね。

荒北が道の上で魅せる、初めてのかっこよさに私は熱に浮かされたかのようになっていた。

ロードレースって何なんだろう?
自転車の上には、道の先には何があるの?

キミたちを見ていれば、いつか解る時がくるのかな……


「ゴーーール!
一日目のリザルトは
……何と三チーム同着です!!」

拮抗する情熱は時として、驚きの結果を引き起こす。


セラがつぶやく。

「あれれ。てっきり去年みたいにぶっちぎりで勝つのかと思ってたんだけど」
「あは。三チーム同着って、どういう確率なんだろ?」
「現実は小説より奇なりってことね」

荒北……私もとんでもない自己中で、他人にはあまり興味がなくて、今も自分かわいさにたったひとりを選べないような優柔不断さだけど。

もしキミのアシストを私も受けられたなら、もっときっと良い方向に変われるのかな?
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