インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第16章 インハイスタート!
歓声の波がうねりながら、だんだん近づいてくるのが解る。
その中心にいるふたりの姿を、私とセラは山岳の頂の直前で捉えることができた。
玉虫色の、いつかも東堂くんと競ってたカレと、紛れもなく本物の東堂くん。
ふたりは登りとは思えないものすごい速さで、ほぼ同時にリザルトラインに突っ込んだ。
そしてーーーーー……
「ゴーーール!!
山岳リザルトは地元神奈川東堂ーーー!!山神ーーー!!」
そう、先ほどまで私はセラにたしなめられていたのだ。
『要は最後に優勝すればいいんでしょ?
1日目のそれも途中のステージを制覇したからって、それほどイミのあることになるのかな?』
などと口走ってしまって。
そんなふざけたこと言ってた私が全身の血が沸き立つほどの感動に震えた。
隣で、セラが何か言ってるけど、聞こえない。
東堂くんは欲しいものはこの瞬間みたいに絶対手にしてきたし、これからもそうなんだろうな、そこには私も含まれてしまうのだろうかと、一瞬でそこまで考えた。
それから、東堂くんが山岳をとってくれたことへの喜びがじわじわと押し寄せる。
自称美形だから、とかじゃなくって、彼を司る魂が、彼を構成する全てが、かっこいいと思えた。
打算まみれなことを平気で口にしてた自分が恥ずかしいくらい、キミがすごく眩しいよ、東堂くん。
汗だくの東堂くんと目が合う。
こんな私にあなたは微笑みかけてくれるんだね。
何もかも出し尽くして、憂いを帯びていた瞳が輝くのを見て、何でこのひとは私なんかを好きなんだろう?とフシギに思う。
つらいだろうに。
苦しいだろうに。
全力で勝負した身体は限界をとっくに超えて悲鳴を上げているだろうに。
小さくなってゆく東堂くんの背中を見つめながら、東堂くんを知れば知るほど彼に惹かれていく自分を実感する。
こんなに一日で感動を与えられたら、もし私が彼を好きになったら、すぐに彼が私を好きな気持ちなんか上回って、どんどん温度差が広がってしまうんじゃないかなって思う。
彼の告白にも、誰の告白にも応えてない私が何て自分勝手なことを考えてるんだろう……
改めて東堂くんは自称じゃなくて、本当にかっこいいんだと実感した。