インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第15章 天の邪鬼の大いなる純情
「ちょっとだけ聞いてくれる?
本当は初めて逢った時から、ずっとお前が欲しかった。
あの日から、夜は眠れず、昼はひたすらペダル回しながら、やるせない、たまらない日々を過ごしてたヨ。
こんなにも、好きで、焦がれて、忘れようと心の隅に追いやろうとしても、どーしてもできやしねェ。
お前に会えたと思ったら、憎まれ口叩くダチポジ守ることに必死になるだけで、心にもないことたくさん言って、キズ付けちまったな。
お前になぜクマができてるのかは聞かねーが、お前を好きな気持ちはぜってェ、他の誰にも負けてねェ」
は初めて聞く荒北の告白に、かつてない衝撃を受けていた。
「か……勝手過ぎるよ。
私のこと女とも見てない態度とり続けてきたくせに、今さら突然す……きとかっ……」
その時、不意には思い出した。
荒北は……あの橋本さんを振った日、全身全霊で繋ぎ止めたい女がいるとか言ってた……
あの時はこのヒトを見下した男に、そこまで言わせる女ってどんな人だろうって少し羨ましくもあったっけ……
え?羨ましい?
「いや……そんなことは決してなかった……はず……」
「あーあーどーやら混乱させちまったな。
無理もねェ、オレが今までお前にとってきた態度かんがみればな……
ただ今言ったことは全部マジだから。
お前がそのことを理解出来た時に返事はくれればいい」
「分かったよ……つまり荒北ってぽっちゃりがシュミだったんだね」
やっとのことで、がそう返すと、荒北は困ったように、しかし優しく口角を上げた。
「お前はほっせーよ。
まあ、間違ってはないかもねェ。
力の限り、抱きしめても折れちまわねーように、もっと食って欲しいくらいだからァ」
「荒北……遅刻魔は見付かったのか?」
背後から氷のような無表情でふたりに接近してきのは、東堂だった。