インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第15章 天の邪鬼の大いなる純情
『ちょっとまだなの?
もう開会式始まっちゃうよ?!
分かってるでしょ、去年の覇者、ハコガクは壇上であいさつするのよ!
今どこなの?!』
「ごめん何か、昨日とか……楽しみ過ぎて、あんまり眠れなくて……それで寝坊しちゃったっていうか。
いっそ、寝なきゃよかったね、今、いそいでる」
『見られなくて後悔するのはだよ。
眠り姫のが眠れなかったなんて、めずらしいこともあるものね』
セラとの電話を切ったは走りながら思った。
だって、あのふたりのこと考えてたら、眠れるわけないじゃん。
真波くん……私が誰より一番だって……
東堂くん……私をどうしようもなく求めてるって……
照れる、けど、心を背けちゃいけない。
ふたりの真剣さは、痛いほど伝わってきたから。
考えようによっては、私、自由に二択で選べる立場じゃない。
男ふたりくらいこの手で軽く転がして~って、告白してきたのがあのふたりじゃなかったら、こんな風にかんたんに考えられたんだろうな……
やっとインターハイ会場に着き、そんなことを考えつつ、セラを探すは後ろから話しかけられた。
「何ニヤついてんだ、悪いもんでも食ったのか?
見たところ、食べ過ぎたように見えるケド」
「あ……らきた!
そーよ、お腹いっぱいよ!」
は知り合いに会えた嬉しさと、いつものようにバカにされた悔しさで、複雑な気持ちに陥った。
こんな、全くふたりの気持ちに気付いてなかった私のこと、それでも気付くまで好きって伝えて待っててくれる人もいるのに、この男、私を動物か何かだと思ってるんじゃないでしょーね……
「でも好きだぜ。
オレにとってはこの世にたったひとり、やっと見付けたただのちっこい女のコだ」
「私は別に小さくない……ってはああああ?!」
いきなり何だこの男。
私をからかって遊ぶ新しい趣味に目覚めたのだろうか……
違う……遊びだと言い切るには、あまりにも真剣な瞳。
ふだんはやる気なんかない、細められた目が、ギラギラした野生の輝きを帯びて、私を射抜く。
は荒北から目が離せなかった。